西高東低
nonya
震える指先を
ポケットに滑り込ませたら
捨て損ねたレシートが
指の間で微かに笑った
不確かな足取りで
迷子のふりをしながら
逃げ損ねた枯葉を
靴の踵で踏みにじった
丸めた背中を
透過していく大陸産の風は
掴み損ねた記憶だけを
鎖骨の裏側に置き去りにして
遠ざかる空の
足元にじゃれつく太陽は
溺れ損ねた者の影を
もう温めてはくれない
高い所から低い所へ
水が流れ落ちるように
風は等圧線の尾根を下りてくる
低い所から高い所へ
しがみつこうとする姿勢のまま
人は無様に流されていく
それでも
冷蔵庫の中で腐らせてしまった
果実のような後悔を
横隔膜の上でカラコロ言わせながら
季節を巡らなければならない
季節を思い知らなければならない
まだ
冬は始まったばかり