せんせい
佐々木妖精

つまらないわがままの後
ふいに上向いた気分と
言葉を飲み込んでしまい
二度と口をきけなくなって
ずいぶん経った

元気ですか
姿なき車に怯えていたあなたが蹲っていた場所を
久しぶりに通りました。
一輪の花が供えられていました
あなたとの連絡はとれませんが
あなたがまだ生きているのだけは分かります
ここにあなたのにおいはありません
俺の倍の時間を費やした
あなたの匂いは心地よく
汗ばんだその髪に 顔を埋めるのが好きでした
初めて好きになった人でした
ただ手をつないで眠りたい
抱きしめてもらいたい
セックスしたくない
そんな日にあなたを思い出します
照れくさくて言えずにいたこと全部受け入れてくれた
あなたの幻に包まります

ごめんなって呟いて
見えないあなたを探ります
あなたと似た人を触ります


自由詩 せんせい Copyright 佐々木妖精 2008-11-19 17:56:20
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