この螺子は叫びながら
伊月りさ

プラスで
廃品の
螺子を外して
新しい文明を浮かべている
叔父の頭の
螺子は外れて
いるけれど
ずんぐりとした小さな背中、
埋没させる金属に
持ち寄られた期待に添いたい、優しい、
ずんぐりとした小さな背中、
お馬さんごっこをしてくれた
叔父の頭の
螺子は外れて
いるけれど
わたしの指から溢れ出る
非日常言語の一滴が
色づく理由があるのなら
それは深い、ガラクタの森に
無限の光が見えている
ひとりの男の遺伝子だ
配線をかき集め
電流を喜んで
絞殺を目論むそれに
体温を感じている
ずんぐりとした小さな背中、
今日もなにかを拾っては
プラスで
マイナスで
解体して
解体してしまって
壊れたドアーの向こうにいる
そういった絶対の
ひとりを繋ぎたい、
ひとりを繋ぎたい、
ひとりのあなたが、わたしにはわかります、
兌換性のない情熱が
振り回すドライバーで
螺子は外れて
いるけれど、わたしは
生きています、わたしは
愛されています
死んだことに気がつかない愚鈍は
恍惚にゆらめく一種の愛情であると、わたしは
信じています
ずんぐりとした小さな背中、
とても、あたたかかった、あの日
とても、あたたかかった、今日も
わたしの螺子は日本語で
叫びながら回転をして


自由詩 この螺子は叫びながら Copyright 伊月りさ 2008-11-18 22:27:25
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