生地のはなし
伊月りさ

きみをひきのばして大きな一枚にして体に巻きつけたい、くるまったままで、そうすればどこへ行くにも一緒だ

わたしを抱きしめながら言う空想を
わたしは空想をして

よく言われるのは
「頭小さいね」って、なので きっと
ひきのばしたってきみをくるめるかわからないのだけれど
頭蓋骨を砕いていくきみの手のひらのやわらかい部分に
頭蓋骨の破片が刺さっている
皮を突き破っていく、あたたかい水が繋ぎになって
大きな一枚になっていくわたし
首から、肩から、乳房がつぶれて
いく日々に積もっていく
きみをおもう気持ちが
大きくひきのばされていく

わたしがきみにしがみつきたいのだ、から
体は痛くってもいい
交接をこえる術を見出したので
わたしがいなくなっても
きみのわたしになっても
むしろその矜持を傷つける盾になりたい、から
体は痛いほうがいい

頭のなかで
今年一番の北風から守るよ、って
その孤高を鼻でわらって
かわいいね、
かわいいね、って
撫ぜる頭のあたたかさを
おもうわたしの頭のなかで
きみはわたしを押しつぶしていく
頭が転じたいびつな布で
きみをくるんでいる愛
のような優越になって
わたしがひきのばされていく
わたしが保護になっていく
わたしが体温になっていく
わたしにまもられてわたしと一緒でないと
死んでしまうきみになっていく
から、体が痛いことに笑んでいる

んだよ、と
解説をするこの頭
きみは横目でなにかを言って
布団にくるまり背を向ける


自由詩 生地のはなし Copyright 伊月りさ 2008-11-17 12:56:25
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