その時こそ僕はハローって言う
ホロウ・シカエルボク



何処に居るかなんてもういい、誰と居るかなんて
いちいち説明しなくてもいいのさ
居てくれればそれでいい、君が君として
どこかで生きていてくれれば
守らなくちゃいけないものだから約束と呼ぶわけじゃないんだ、じゃあなんだって聞かれても
うまく、話すことは出来ないけどもさ


こう考えたらどうだろう、例えば僕たちの間にある距離は失われた路線のようなもので
もうなにもその上を走りぬけることは無いけれども
その間は確かにふたつの終点でつながっている、君は僕の駅に
時々伏目がちな感じで合図を送る、僕は君の駅に
不自然なほど明るい態度でよく見えるように答える、そして君は
そんな態度の裏にあるもののことまできちんと気づいてしまうんだ
そんなの不健康だろ、君は約束を気にするあまり
おなかを壊してしまうかもしれない、定時連絡なんてもう必要ないんだ
この路線にはもうなにも走ることは無いんだよ、せいぜい
「なにもない」という場所を吹き抜ける風ぐらいしか
君の気持も判らないではないけれど、君の隣に居る人が
こちらに向かって合図を送る痛ましい背中を見たら
もしかしたら少し傷ついたりするかもしれない
一度の優しさでいろんな人が傷つく
思う気持ちのすべてが
誰もを救うなんてことは無いんだ
冷たさこそが優しさになることだってある、僕と交わした約束のことはしばらく忘れた方がいい
痛みを伴う友達なんてたぶん本当の友達じゃない
その上で


線路がもしも遮断されなかったら


その時はまた互いのホームの端に立って
懸命に手を伸ばして合図を送ればいい
僕から送ることはあまりないかもしれない、もしかしたらそのころにも
僕のベッドには君の写真が立ててあるかもしれないから
僕から合図を送ることはたぶんないかもしれない、だけど
君からの合図を僕は絶対に見逃さない、わずかなタイムラグも作らずに
僕は僕の駅に立って君に信号を送るだろう
真っ直ぐに手を伸ばした君の姿を見れば
僕の暮らしにも違う何かが訪れるかもしれない、もしも僕が
この暮らしの終点からどこかに延びる新しい路線を作ることが出来たら
その時こそ約束の続きをしよう、どちらの人生でもない小さな駅で待ち合わせて
同窓会みたいにそれからのことを語ろう
「離れ離れになったおかげでこんなに幸せになった」って
それぞれの人生をめっちゃくちゃぶつけよう
でも今は
判るだろ
君は僕に合図を送るべきじゃない


そんな顔をしないで
そんなことを言わないで、君の気持は判ってる
君がすべてを望んで
そこに行ったんじゃないってこと



僕を切り捨てるようなことをするつもりじゃなかったって、ことは
嫌になるくらい、よく






判ってるから







自由詩 その時こそ僕はハローって言う Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-11-16 22:58:40
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