文化祭がしたい。
仲本いすら


僕らの未来に、花束が添えられていた。

 下校時刻はとうに過ぎているけれど、まだ帰りたくはなくて
 意味もなく美術室に篭りエッシャーの画集を読み漁っていた
 ビビットカラーをこぼした床では死んだはずの先輩がすでに
 樹木みたいな根を張っていてああもう僕は逃げられないんだ


上履きのかかとを踏んでいた。

 それと一緒に、明日の影も踏んでいたかもしれない。

 窓ガラスを割り歩いた青春なんてないし
 なにかに熱中した生活ってわけでもなかったけど
 黒板に書かれた文字を見るたびに
 鼻の奥をすっぱいものが通る

 ああ、文化祭がしたい。

 世界が終わってしまう前に、
 文化祭がしたい。



自由詩 文化祭がしたい。 Copyright 仲本いすら 2008-11-16 19:38:07
notebook Home