すっとこどっこいスラッシュメタル
パラソル
ぼくはたいこをやるよ!
じゃあぼくは、ベースをやるよ!
じゃあ、ぼくは、ギターをひくよ
ぼくー ぼくはー ぼくー
・・・にわとりにえさをやるよ
そんな4人が結成したバンドがありました。
むかし、むかしのお話です
ちょうど、三年前くらいですね。
たしか、斎藤先生が痴漢で逮捕された頃だと思います。
◆◆
あの頃、ベイエリアのスラッシュメタルシーンは
有望な新人があらわれず、シーン自体が衰退の一途をたどっていた
その頃、僕は煙草が吸いたかったので、五丁目の煙草屋に行くと
店番のおばあちゃんが、いつのまにかサイボーグになっていた。
見た目は同じだけど声が絶望的に違った。
「サンビャク/ゴジュウ/エンダヨ/マタキテネ」
この声をきいて僕はバンド結成を決意した。
あのね、バンド結成っていうのは簡単なものなんですよ。
最悪、人が2人いればいい。
一人はギターをやって唄う。一人はベースをやって唄う。
ドラムはドラムマシンにまかせる。
いや、人が一人でもいいんだ。ギターなんてなくてもいいし、
ベースなんてなくてもいいし、
ドラムマシン一人が友達だっていいじゃないか。
◆◆
ベイエリアのスラッシュメタルシーンでは、
スラッシュメタルバンドが急激に減っていった。
その頃、僕ら4人は、校門の裏でバンドを結成した。
ドラムはドラムをたたいたし、
ギターはギターをひいたし、
ベースはベースをひいたし、
残る一人は にわとりにえさをやった。
彼は、歌えなかった。
僕らは曲作りをした。
「仮装ぶとう会」という曲をつくっているとき、
あれは、ぶとうだったか?ぶどうだったか?
意見がまっぷたつに割れた。
ギターとドラムはぶどう説を主張し、
ベースはぶとうだと言ってゆずらなかった。
残る一人は にわとりにえさをやっていた。
彼は、しゃべれなかった。
◆◆
そして、
ベイエリアのスラッシュメタルシーンには、
スラッシュメタルバンドが一つもなくなっていた。
もともと、ベイエリアのスラッシュメタルシーンなんて
存在しなかったのかもしれない。
それは、スラッシュメタルマニアが抱いたまぼろしで、本当はうそだったのか?
いや、でも、少なくとも、
まぼろしなんかじゃないことがある。
僕がにわとりにえさをやっていたのは事実だし、
僕が、にわとりにえさをやる後ろで、
ギターはギターを、ベースはベースを、
ドラムはドラムを、
えんそうしていたんだ。
これはまぎれもない事実だ。
そして、バンドは解散した。
これもまぎれもない事実だ。
◆◆
むかし、むかしあるところで
僕はバンドをやっていた。
スラッシュメタルじゃなかったけれど