あらののはてに、わたしはひとり
渡邉建志
あらのをあるいた。
土、岩、石ころ、草、葉、笹のような水にぬれた草、そしてまた土、石。
ページに目を落とす。ひとりぼっちで荒野をよぎる。
荒野のはてに。荒野のはてに。わたしはひとり。
エレベータで八階へ登った。大きな窓が二方向にあって、
百二十度の景観のある、でもだれも来ないエレベータの裏。
ビルは低い。空は広い。
太陽が広い空に帯を描く。遠くに富士。
北を見る。
時計台の陰から小田急の特急が、つながったソーセージみたいに次々と出てくる。
ゆっくりと、とても長く。
井の頭線の屋根が家と家の間を行き交いしている。
太陽が沈み始めた。
富士の向うに落ちると、そのシルエットが紫色の空に浮かぶ。
その空に足をひた
そうとする。