指定席
紫音
「ここにしなさい」
「そこにします」
「あそこにいなさい」
いつしか指定され 落ち着いて 過去になる
偉大な恐竜も
壮大な樹林も
決まった層からしか出てこない
そう そこが過去になった彼らの指定席
埋もれ 沈み 積もり
与えられた痕跡の場所
かつて自由に疾駆した脚も
天に向かい広げられた葉も
石となり 偶然が見つけるまで 眠りにつく
決めていくのは
人ではなく 不可視の指
やがては人も 言葉も
まだ 座りたくはない そこ に
慣れていく 嵌っていく 指定席
そこから見える世界は
鳥を見上げるように 海を見渡すように
自由のようで届かない