渡邉建志

わたしは言った
「あなたのことがすき」
彼女は夏のような目を開いた

ただ、セミが潮騒みたいに鳴いていた
緑がざわざわ動いて、そのむこうのとぎれとぎれの空もいっしょに動いていた
祠の向こうの神さまだけがじっとしていた

あなたはなにもいわずに、夏のような目を目の前の夏に向けていた
わたしはあなたと空を交互にみて、だまって待った

わたしは心のなかで100からカウントダウンを始めた

あなたはなにもいわなかった

ついに0になって
わたしは思わず
「ねえ」
といってしまった
あなたは

しずかにうなずいて

夏のような目をゆっくりととじた
木の上の夏もまた
その大きな目をとじはじめて

気がつくと
雨が降っていた




自由詩Copyright 渡邉建志 2008-11-13 03:04:56
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