小さい人
オイタル

壁に貼られた
青い紙の端が
少しめくれて
その陰に潜む
小さな人

こちらへ
近寄ってらっしゃい
微笑んで
じわりと
にじり寄ってらっしゃい
その長い
指に
私の背中を
吸わせてみせて
あなたは友だち

私は声を出さずに泣く
みんなから
少うし
はがれていく
うつむけばいいかしら
左手の薬指の先に
鉛筆の黒い芯を打てば
いいかしら
この髪の
裏側を
こすれる音を残して
少うし
掻いて
いいかしら

吸い口から水をひとくち
パンを手でひときれ
こぼれても拭かなくていい
汚れてもそのままで
その屑を口元に小さく並べて
シーツを水でぬらしたままで
それが私の証だから
それだけが

指を五メートルほど
壁に伸ばして
魚のように背を丸め
目は瞬きを失って
嘆きの
壁に貼られた
青い唇の端を
少しはがして覗くと
小さな人が
けたたましく
けたたましく笑った


自由詩 小さい人 Copyright オイタル 2008-11-10 23:28:30
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