白く。いつかの、いつもの。
ku-mi

ポタージュが冷めるのを待てず
やけどする舌
冷たい朝に

湯気の向こうで
陽の光が磨りガラスにはじく
無邪気なほどきらきらと

関東地方の今朝は今年一番の冷え込み
半袖のニットを着たアナウンサーが言う
冷え込んだこの町の6℃は
北国の積もり始めた雪を溶かすというのに

身支度をはじめた私の素足に
小さな電気ストーブの熱と
ストッキングにじゃれる猫の爪
あれは
初めてホワイトイルミネーションを見た年の白い朝
灯油が切れていて
ふたりで凍える思いをすることももう、ない

ゆっくりと
この町の温度とポタージュの温度が
平衡に近づいていく

ストッキングを履き終えて
ひといきにすすったポタージュの残り
やけどした舌はひりひりとまだ
痛むけれど

時間に背中を押され
パンプスをつっかけたまま
玄関を出る

ああ、それでも
息だけは白い

ふと
髪に絡まったような気がした
雪虫
あの日 銀杏の葉音を鳴らして
そっと髪にふれた人の指先を思い出しながら
地下鉄の階段を下っていく


自由詩 白く。いつかの、いつもの。 Copyright ku-mi 2008-11-10 21:53:43
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