終わりなきメロディー 第4話
K.SATO
ヘリは無事味方のキャンプに着陸した。僕は目を覚ましていたが、大佐はまだ眠りこけているようだった。先に地上に降り立つと、アスファルトを懐かしく感じながら数歩進んだ。そして振り返らずに、「先に行きます」と歩き出した。まったく、この軍の士気は大丈夫だろうか。まずこの重いリュックや武器などを置くため、荷物置き場へ向かっていった。仲間たちから「よお、大変だったんだって?」「奥さんにちゃんと無事を伝えろよ」などの声をかけられては苦笑した。抱き合っては笑いあった。そして「またあとで」と、テント裏にある民家の入り口を入っていった。前は民家だったが、アメリカ軍が買い取ったものだ。本国から連れてきた大工は壁や床を改造し、西洋風の細かいテクスチャーが入ったベージュ色の壁紙をあしらい、最後に長いテーブルをひっぱってきて居間だった部屋に置いた。軍部はここをA地点における司令部とした。建物の入り口の前には食堂が広がり、端に人の肩幅はありそうなばかでかい鉄のかたまり。よく見るとノブのついたロッカーで、所属する班の荷物置き場だった。自分の名前が書かれたプレートの貼ってある小扉の前に立つと、胸ポケットから束ねたキーを取り出した。一番小さなものを選び出し、カギ穴につっこんでひねった。引っ張るとガチャという音がしてなかが開いた。人一人入れそうなほどに巨大な灰色のスペース。ああ、これはここに来たばかりの僕が見た風景だと、四角い空間がなんとなく懐かしく思えた。