迷彩
nonya


雨雲がはびこった空へ
僕のねずみ色の狡さが
こっそり飛び去っていくのを
ぼんやり見落としながら
また天気予報がはずれたと
君は唇をとがらせた

ガジュマルの葉っぱに
君の赤毛のしたたかさが
ぎっちりしがみついているのを
やんわり見落としながら
出掛けないほうがいいかもと
僕はTVのリモコンをいじっていた

どうしても言い出せない
砂埃によく似た言葉が
テーブルの上に降り積もるのを
見て見ぬふりで
二人は熱い紅茶をすする
するすると
ずるずると
済し崩されていく毎日を
幸福と呼べないことはない

見破ってはいけない擬態を
すんなり避けながら
剥がしてはいけない保護色に
はんなり微笑みながら
僕は大人を続けているし
君は女を続けている

綻びかけた互いの輪郭を
するすると
ずるずると
器用に引き抜いた君は
仕方なく編み物を始めながら
お昼は何にすると
僕を見ないで聞いた

ありもしない無垢を
すらすらと
ずらずらと
並べただけの流行歌に
飽き飽きしながら僕は
なんでもいいよと
君を見ないで答えた

休日の短い午前の
穏やかなキャムフラージュを
幸福と呼べないことはない


自由詩 迷彩 Copyright nonya 2008-11-08 12:45:18
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