水牢
透明な魚

空から降る雨の粒
その数を僕は知る
乾いた大地に雨粒を弾かせて
その淡い弾力で君を包む
雨量を司る龍に凭れて
愛した人に祈りをささげる


彼女は何処か知らない場所で
延々続く雨粒の中
宇宙の欠片を歌っている
その声が僕にまるで聞こえなくて
その声が僕の為で無くて
誰か知らない
僕の知らない誰かの為だと知って・・・
僕の創る雨の粒は
彼女を覆いその地に閉じ込める


其処には意味が在る


僕は公園のベンチに座って
果て無い物語を詠んでいる
沢山の分岐の壁が沢山の光と影を彩り
僕は宇宙の欠片を歌う
温かくも冷たくもない君の掌にふれて
其処から溢れる創造の芽に僕が水をあげよう
良く育つように
良く育つように


待ち続けている人は多くて
僕は暫しの別れを告げる
其処に混じる色んな気持ちが好きだ
人は絶対的に殉ずる事ができない
肉体とか精神とか
僕は酷く優しいからとても罪深い


君に手紙を書こう
一言添えるだけの絵葉書
其れは雨粒を貫いて君の世界に届くだろう
君は
家から少し離れたポストに
赤い合羽を着て其れを取りに行くだろう
水溜りに弾かれる雨粒に雨蛙
其処に在る世界だけが僕に波紋する






自由詩 水牢 Copyright 透明な魚 2008-11-06 23:49:12
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