佐々木妖精

急いでいました
ぶつかった人へ謝る暇も惜しんで
急いで得した時間を
その場で切り崩すことしかできず
余裕ないんだよね
あわよくば見逃してもらえると思っていましたが
実際 そうでした

空き缶に吸いがら
貯めるのやめました
今は湿気だけが積もります
ポケット灰皿は擦り切れて
ついたまま揉み消した火の痕が
いまだ消えずに残ってます
節約した時間と惜しんだ手間が
そのまま居場所になってます
よたよたと寄りかかった壁が
あってよかったと思います
染みひとつない天井は
ジャンプしても届きません
前人未到の天井は
ロフトがないと届きません

長袖たくさん届きました
残暑厳しい夕暮れに
着たきりスズメで飛び出した
息子の部屋に大荷物
しばらく開けずにほっとくと
ふやけた林檎も出てきてさ
どうしようもない息子です
親父は変わらずパチンコ狂
抱かれていったパチンコ屋
転がる銀玉集めてさ
煙草の煙で隠された
夜をふさいだ青天井
帰りにヤクルトもらってよ
楽しかったなあなんつー
どうしようもない親子です

そうですね
速やかに宇宙人が
地球に侵攻してくれればいいのですが
国民は銃を持ち
市民は隊列を組み
農民は竹やりを構え
十字軍は毒薬を散布する
非常事態宣言の中
ハケンはナイフを振り回し
オタクはガンダム乗り回し
ブルハは捨て駒になってくれないかと扇動し
詩人は地球を守れの大合唱
ネットカフェの個室に赤紙が届き
経済難民に名誉が支払われる
もっともメンヘラは
それでも自傷に耽るかもしれませんが
早くイスラムを根絶して
アメリカに世界を統一していただきたいのですが
フセインにすら理があるように思えたのですよ
IT革命を機に勃発した冷戦は今や
日本列島を粉砕してしまいましたが
oraの部屋には電波がねえ
oraの廃村むらには一揆もねえ

弱っちまってんだよお前
だからダメなんだよお前
会っちゃえばだいたいがいいやつだって
分かってんだそんなこと
戦争の中で反対を叫ぶのと
平和の中で賛成を叫ぶのが
同じだと思ってっからダメなんだよ
方言聞かせてやっから金出せよ

うそつき

稀に誤射するビデの水流に
別なやり方で日々を凌ぐ
誰かを想うこともあります
私には必要のない機能です
これで飛べればいいものを
今日も明日も天井知らず
これで飛べればいいものを

置きっ放した林檎を一つ
爆弾気分で投げました
グラグラと空は揺れ
袖口からは 甘い香りが拡がって
受け取りそこねた果実が
ああ。


自由詩Copyright 佐々木妖精 2008-11-05 19:18:29
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