訪れ
石瀬琳々
障子に陽がうすら射すと
はらはらと
失われた記憶が降って来る
わたしを見つめる瞳がある
胸のなかをそっと覗くように
わたしはきつね
さびしいきつね
指でなきまねをする
ひとりあそびの束の間に
ひらひらと
重なる影がひとつ揺れる
なぜだか胸が痛くなって
障子を開くと銀杏の
落葉
(
らくよう
)
ちょうちょ
ちょうちょ
今にも飛んでゆきそうな
とどまらず漂いゆく光よ
きらきらと
一瞬の命に心は魅せられる
あるかなきかの予兆にも似て
この指先をかすめてゆくのは
自由詩
訪れ
Copyright
石瀬琳々
2008-11-05 13:41:48
縦