目覚めると
オイタル

目覚めると泣いている
車窓を過ぎる色の落ちた看板
路地裏のひまわり
僕が僕から立ち去ろうとして
ふと吹き込むふるさとがある

立ち枯れた楓の根元にしゃがみこみ
裾を引くふるさと
囲炉裏を均す火箸の先に
からみつくふるさと
カーテンの隙間にもつれる陽の端切れ
水芭蕉
オリオンのわき腹から
暗いトタン屋根へ
長く足を伸ばして夜空を渡る
僕の目の裏の
幾千の

がぎげごの葉の生えた壁伝いに
消えかかる牛小屋の角を曲がると
秣を食むふるさとが
よだれをたらして
僕を見ていた


自由詩 目覚めると Copyright オイタル 2008-11-04 10:22:10
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