夕暮れのブランコ
鯨 勇魚
ためらいがちな足音に
黒猫がライ麦畑を
横切るかと思えば
午睡となりました
その下を駆け抜ける
セピアというべき
むぎわらぼうし
遠い夏の風景と
すでにその風景の中の
ひとこまになってしまう
幼い日
朝顔の花をむしったなら
雨が降る
なんて教えてくれたのは
眠りのふちで
巻いたしっぽを
はたはたさせている
黒猫であり
懐かしいものは
あくびのように
わけのわからない涙
なのかもしれません
はっきりとした理由を揺らし
夕暮れにブランコを揺らして
たとえばラムネ玉を喉に
つまらせそうになりながら
背中の景色の高さから
きこえた風があの
あさがおの香りに似て
昔も明日も
天気でありますように
いつのまにか真っ暗闇で
時間はなぜ24時間なのだろう
月夜のブランコではしゃぐ
最後の自由でした