デルモンテ
透明な魚

何かを始めなければならない時とか
何故こうも憂鬱になるのか
僕の淵源にはqualiaが程々に溢れていて
僕は僕に「ああ、そうなの」とか
「しかたない」とか
circleの中には僕にとって価値があるであろうと誰かが思うものが
品の無い善意で配置されているので
其れが又眩暈の原因となる


雷鳴が僕の心を今も離さないのは
その時強く降った雨音が
僕の鼻先をコンクリートにふれさせたからかも
この世界は心が全てを支配する


デルモンテと聞いて僕が思い浮かべる赤色
其処には空の味がinputされている
蜂の巣の模様に惹きつけられた時
其処に在る温度が僕に蘇る


僕は酷く簡単な世界に生きていた
どれだけ世界そのものが複雑であろうとも
人は其れを受け入れて簡素化する能力がある


どうしようもない程の暗闇から這い出して見た景色は
無常からも僕を引き揚げてくれた
面白い時に笑い
悲しい時に泣く
その意味さえ解からなくなっていた事が
僕を操る透明の糸が器用に動き
僕は地面に平伏した


僕は死を何度も何度もなぞる
其処に在る記憶を吟味する
僕を占める儚い想いが世界に与える事の意味を考えている
例え其れが何の意味も無く
「いいよ」と言われた時は
僕は震えながら眠りにつくだろう


デルモンテのトマトの缶詰を開ける事ができないのは
家に缶切りが無いと言う事とは
根本的に別問題だとなんとなく思う
現実には缶詰さえも無い
僕は不意に記憶の中で其れに出会っているのだ
現実にはパスタを食べながら
混沌とした記憶の中でフォークとスプーンは軽やかに宙を舞う



自由詩 デルモンテ Copyright 透明な魚 2008-11-03 20:16:44
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