海面上昇6
rabbitfighter

街の風景を愛しく想うのは
街が僕の延長であるからだろう
あらゆる物を僕は備えている
爪や血管、汚職や罰金の滞納ですら

何もかも僕に似ている
路地や神社や夕暮れの生殖器
傷跡を覆うように 
歪な瘡蓋が副都心を再開発し
やがて破綻する

魂の在処は
隠されているのだろうか
それとも

上へまいります、と、中指を突き上げて微笑むエレベーターガール
下へまいります、と、親指を下に向けて微笑むエレベーターガール
僕の恋人たち
ここは僕の街
魂の在処は
隠されているのだろうか
僕から

深い川
深い森
隠されているだけでまだ
少しも衰えることなく
いつかまた大地を覆うような
繁栄の日々を夢見て眠っている

街を語りつくすことなんてできない
だから本当の意味で、僕は死なない
魂が死んでしまった後で
川が涸れて
森が枯れても
そこに砂漠が残り
砂の一粒一粒が僕の思い出を語る

すくえばいい
両の手のひらで
すくってください



自由詩 海面上昇6 Copyright rabbitfighter 2008-11-02 17:33:54
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