Sunny Day
ホロウ・シカエルボク





お前は
晴れた空のもとに居た
晴れた空のもとに居て
果てしなく涙を流していた
生きてることが嬉しい、馬鹿みたいだけど
お前は言葉を詰まらせながらそうつぶやいた
神の不在を信仰していた時代
暗い心を抱きしめていた時代
お前のそばには悪魔が寄り添っていて
俺を憎むように囁きながら目を光らせていた
どうだ、水晶のように突き抜けた空の碧さ
お前は生きていることを知って
再び俺に笑いかけた
どんなふうに笑い返せばいい
生まれたての子供のような心のままの笑み
純粋さにたじろいで俺もまた涙を流した




塗装の剥げ落ちた古い家屋の
焼け焦げたある部屋に
直接結ばれたままだった恐怖
閉じ込められて行き場をなくした
未来がいま世界を受け止めたのだ
最後の瞬間は沈み
塗り替える為の
白紙が用意された
お前には分かっていたのだ
確信もなく繰り返していた俺よりもずっと
母親や父親の狂気を
一身に受け止め続けてきたお前にはずっと




鮮やかな草原
うずたかく積もった哀しみを
奪い去るように北風が吹く
お前は笑いながら
海がつかめる丘の終点まで駆けてゆく
その背中を見つめながら
その輝きには届けないと
この俺の手が届くことは無いと
俺は感じた、けれど
それは幸せな気分とは何の関係も無かった、望んだ解放
俺たちが何よりも望んだ解放がいま碧い空のもとにあったから
それは奇跡だった
生きることを許された
生きることを許されたふたつの温かいかたまり
光りの欠片をちりばめた海を見つめながら
お前は初めて明けた世界の
眩しさを吸い込んでいた
神の不在を信仰していた時代
俺は急ぎすぎて
お前の横に立っていることが出来なかった






神よ






自由詩 Sunny Day Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-11-01 22:35:32
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