きしみ
恋月 ぴの

手首の傷は癒せたとしても
こころの傷は癒せない

ずきずきと痛むこころの古傷は
まるで親知らずの発する悲鳴のようで

嘆いているわけじゃない

こんな季節の溜め息は
寝付けない台所の取りとめなさにも似て

曖昧のままで済まそうとする思いと
これで終わりにしたいと言う思いとの狭間で
不規則に揺れ動き
壊れかけの振り子時計になる

故郷へ帰ることを拒んだ夏鳥の姿に自らを宿し

気まぐれな涙腺のいたずらを隠そうとして
とめどない水泡の強さに身を投げた



自由詩 きしみ Copyright 恋月 ぴの 2008-11-01 20:10:19
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