色あせる空
タマムシ

  「記憶」

見上げれば青空

小さい頃の記憶にある
かつての夏の日差しのように
気づかぬうちに過ぎてゆく
何かがわたしの背中を押している

  「今日」

自分のことでいっぱいなのは
とても幸せなことだと知った
そうやって色あせてゆく日々

(それ以上にあなたは
 遠くへ行ってしまった)

小さい頃の夏の日差しは
小さいままのわたしには
何度もめぐってきて
そのたびに少しずつ違う顔で
微笑んでくれたけれど

  「今が過去になり」

あの頃と違うのは自分だと知った
それはただ大人になるとか
そういう成長のお話ではなくて
誰も教えてくれない経験という過去

(それ以上にあなたは
 遠くに行ってしまった)

小さいままでいたかったわたし
泣きじゃくっているうちに
誰かが見つけてくれる
そんな淡い期待を裏切るように
鮮明な現実がわたしを支配してゆく

  「また始まる今」

くやしいくらいに晴れわたる
空、見上げるのは
泣かないためじゃないけれど

その青空が色あせて見えるのは
わたしが大人になったからでも
わたしが泣かないからでもない

あなたがいない
それだけで

空がこんなにも色あせてしまうのだと
気づきたくはなかった
 


自由詩 色あせる空 Copyright タマムシ 2008-10-31 04:45:50
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