渇いた樹皮降る、腐葉土の寝床に
ホロウ・シカエルボク





近しい者たちが古木のように渇いて、俺の周辺に立ち尽くす
これは何の冗談だ、灰になってこぼれるみたいな息をしやがって
俺の至らなさはお前たちのものじゃない、俺が死ぬまで懸命に抱えてゆくものだ
判ったらここから出て行け、判ったらここから出て行け、立ち尽くすだけのものなど俺は信じない
ほんのふた月前に比べりゃ何もかも楽になったはずなのに、どうしてこんなに奪われている
何を見ているんだ、何を見ているんだ、肉塊の中に深く潜伏したままの言葉を持たない腐葉土の俺、光の届かない場所でどんな輪郭を見てる―お前の見ているものが俺をこんなところに追い込んでいるんだろう?すでに死んでいるんじゃないかと考えることがある、どんな瞬間にもコネクト出来ない重みだけのコアを腫瘍の様に抱えていると、すでに死んでいるのではないかと―俺か、そいつかの、どちらかがさ
釈然としない要因のもとにこっぴどく死んじまっているんじゃないかと
遮光カーテンの蒼をずっと眺めている、欲深くなって死ねなくなったパンク・ロッカーのアルバムを聴きながら
死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのは正しい、死なないのが
死なないでいないと先を見ることが出来ない
当り前のことだがみんな判らなくなってしまう、熱意のもとに傍観する終わりはちょっと美しく見えてしまうからだ、俺はハンマーを手に持つ
古木の様な近しい者たちを―打つ、打つ、かたっぱしから―血生臭い破片を浴びて涙を流しながら
憎まないでいるならその方がよかった
憎まないでいるならその方がよかった
憎まないでいられるならその方がよかったんだ、だけどもうすべては遅い、俺は関わりを殺し始めてしまった、ありがとう、愛してるよ―だけどもう俺に関わらないでくれ
古木の破片は俺の顔に張り付いて涙で発芽する、ああ、ああ
もう一度繰り返すのか、もう一度繰り返すのか?
俺の至らなさを浮き彫りにするために離れない者たち、もう一度始めるのか、もう一度…消えかけた足跡を刻み直すみたいに?何度やったって同じさ、何度やったって同じなんだ、きっともっと変えられるものだっていつかには思ってたよ、ぶん投げられる、散らばる、くたばる、砕ける、こじれる、行方知れず―責任なんて背負うことすら出来なかった、縁の無い者の振りをして、ああそうかと見つめていただけだ、繋がりなんか求めないで、俺の配線は心臓のところで断線しているんだ
羽根のように散る古木の破片、ああ、さようなら、さようなら
別れの瞬間なら告白も御愛嬌だ、寒くなるよ、風邪など引きませぬよう




今宵は暖かくしてお休みくださいませ






自由詩 渇いた樹皮降る、腐葉土の寝床に Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-10-29 23:54:49
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