手のひら
小川 葉

 
故郷での暮らしは
けっして貧しいものではなかった

手に入るものは手に入り
手に入らないものは手に入らない
ただそれだけだった

小さな都会で暮らして
もう二十年になるけれど
そのことだけは変わらない

むしろ
手に入らないもののほうが
多い気がしてる
手に入るものもあの頃と変わらずに
ちゃんとあるのに

過ぎてしまった時は
もう手に入らないけれども
これから過ぎてゆく時は
明日もまた手に入れることができる

そうしていつの日か
入りきらずにこぼれていった
手のひらを見つめながら
過ぎ去ってもなお変わらないものだけを
静かに握りしめていたい 
 


自由詩 手のひら Copyright 小川 葉 2008-10-29 01:38:48
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