黙思
舞狐

目の前にある林檎
赤く赤く鮮やかに


もしも
私に見える林檎の赤が

他の人には
私が見ている葡萄の色として見えていたとしたら

私は他の人が見えている葡萄の色を赤だと思っていて



一羽のカラスを見つけた
黒く艶のある鳥

しかし
私に見える鳥の黒が

他の人には
私が見ている雪の色として見えていたら

私は他の人が見ている雪の色を
黒だと思っていたりして


それでは
私は

この目に映る
何を信じればいいのかと
途方にくれる


また今日も
行き過ぎる人の影を
飛ぶ鳥を
夕焼けを

何も感じないよう
眺めよう

流れる時間だけを感じながら


自由詩 黙思 Copyright 舞狐 2008-10-28 18:11:52
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