銀木犀
湖月
君の泣き声は ちいさくて きこえませんでした
つめたい雨のなか さがしていたのは ほんのちょっとの合図で
こころが 遠くにいってしまったのを悲しみながら またほかの事をおもっていました
本当は 捲るページのなかに暮らしたかったです
一冊の本に住みたかった
けれど わたしがいるのはここだったから
あなたが手を差し出してくれたときそんな思いは消えるはずでした
でも 気付いてしまったのです
銀木犀のふるみちを歩きながら また同じことを繰り返しているだけだと
そう思うと もう続きを夢見ることはできませんでした
それでも あなたのくれたお守りは やさしかったです