超新星爆発
伊月りさ

わたしの
両眼は野良猫なので、まれに
きみの影で化けている
部屋の隅で、まれに
息の根を止め損ねたあの子が見えるのだが

わたしの
言語は蛭
だったのだ、たくさんの日本語が
彼の血を吸いたい
彼の血を吸いたい、と
どの血でもいいくせに情緒的なふりをして
キスで流れた唾液とともに心臓にはりついていて
不整脈になって口がぱくぱくになる
言語が流出して口がぱくぱくに
なっている、
ぱくぱくのわたしたち

箱根が得意だったという噂が実証されました
きみの心臓壁の筋肉は 強豪揃い
の わたしの蛭たちが大破してしまって
スーパーノヴァ 真っ赤に
秘密、好き、名前、嘘、が飛び散って、
高次の染みになって、凝固する
肋骨、不健康な宇宙で、きみの
心臓はふたつになりました
きみの
光の血流で泳いでいる
わたしはぱくぱくと息継ぎをして
きみはぱくぱくとなにかを食して
いる、吸入している、繁殖している、わたしの
お腹に赤ちゃんが
爆発する、
ぱくぱくする、
 産声の一秒前
それは気まぐれな
網膜に映っている
ぱくぱくのわたしたちのぱくぱく


自由詩 超新星爆発 Copyright 伊月りさ 2008-10-27 20:41:17
notebook Home