みかたの声
からゆきさん
家に帰る
玄関のドアノブに冷たい握手を求められ
蛍光灯の白い紐に疲れをのせて引っ張る
おかえり
とパチパチと拍手
今日もがんばったんだ
早く寝ようね
私より先に起きているカーテンに起こされると
親の元へ走りよる子供のように
朝の光が駆け寄ってきて
おはよう
今日もがんばれよ
昨日の疲れを全部吸い取ってくれたパジャマを脱いで
一番の理解者であるスーツを着る
オレがついている
なんちゃって
今日もがんばろうね
オレらもついてるさ、と右の靴が言うと
そうだよ、私もいるんだからね、と左の靴が言う
そうだな
と言ってみたりして
家を出る