蔦狩り
伊月りさ

わたしの声帯から延びた
蔦が
ビリジアンの意地悪だった
集合体は頑丈で 瑞々しい
唇をつたって、ずるずると
出ていく
あのひとの唇をつたって
入っていく
 取り返しのつかない色
 取り返しのつかない生長

 わたしの声帯は潤っているので
 枯れない蔦に
 きみは混乱して
 きみを罵っていた

幸せだから収縮したり、
退屈だから弛緩したり、
そんな
単純な生き物だと思われていたようです。
震わせる
声帯が
震わせる空気に響き渡るそれが
手首を切る嬌声だったり、
乳児を愛でる悲鳴だったり、
することを知らないのだろうか
ら、日の出まで眠れないのだろう
きみは
この蔦に点火すればいいのに

冬が拡大しても
生長が止まらなくて、わたしは
順調に紅葉をして、ずるずると
絡まっていて、鬱血している
きみはコートに通す腕をやめて、
抱きしめました、わたしは
きみの体温が
わからない
きみ越しにわたしはあたたかくて泣いた
水浸しの両目から
蔦は生い茂って
きみを絞殺してしまうかもしれなくて涙が
つたって
止まらない

実って、燃えるように
色づいている
ずるずるとしている
わたしを
燃やしてほしかった
大気が張りつめていく前に、その
 スパイラルハートのジッポで、その
 スパイラルハートのとおりに、きちんと
 取り返しのつかない光熱
 取り返しのつかない導火
 取り返しのつかない煙
 取り返しのつかない灰
 になるまで焼いてほしかった
三十六度の炎はあたたかすぎるので
明日が映りこんでしまう
彼らが映りこんでしまう
彼らにならない方がきっといいと思った
わたしを 今更
燃やしてほしかった
わたしは 這いずり回る
共鳴する器官も止まらないので
さっさと燃やせばいいのに


自由詩 蔦狩り Copyright 伊月りさ 2008-10-26 00:29:15
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