高田馬場駅戸山口
フミタケ

駅の端の小さな改札口で君を待っている
電車がくるたびにパラパラと降りてくるひとりひとり
ここではそんなに多くの人間が行き交うわけでは決してなく
鳥かごみたいな短い階段を
家路につく人たちが通り過ぎる
携帯電話を見つめ
ひとにぎりの時間をもてあまし
いつもここにいると雨を気にしているのは何故なんだろう
と、思うには足りないそのひとにぎりの間にも
山手線やスルスルとメロンソーダ色の弧を描き続けてる
君は今頃きっと
渋谷から代々木のあたりだろうか
約束ともとれないようなやりとりで
ねぇ
まるで恋人達のように
まるでその人を待っていたかのような錯覚にとらわれて
僕はその人の顔を見あげる
彼女も心なしかこちらを見つめ
ほんのつかの間
あれっと
視線を交わす
彼女の待ち人のように見えたのだろうか
親しい人の気配に似ていたのかもしれない
君が来るまでの
ほんの瞬間の秘密がひとつ
こぼれおちていったよ
誰かに待っていてほしい
誰かがまっていてくれたら
待っていてくれたら
それだけで
誰かに待っていてほしい
誰もが


自由詩 高田馬場駅戸山口 Copyright フミタケ 2008-10-25 22:25:08
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