yo-yo

いつ見ても
仰向けにひとが寝そべっている
その山のかたちを
いくども夢でなぞった

あれからずっと
山はおだやかに眠っている
なにも変わらなかった

夏のあいだ飼っていたコオロギを
翅が白くなったので神社の森にかえす
空っぽの虫かごが秋色になった
そのとき背後で
祝詞のような声がした
祭りも終った
もう神さまも山へ帰りはったと
ふり向くと
白いコオロギが落葉を掃いていた

山のどの辺りに
神さまは帰りはったのだろうか
うっすらと湧きあがる雲が
神さまの吐く息にみえた
雲はさまざまにかたちを変え
ぼくの夢の中にまで侵入してくる
だが夢のことは
夢の中でしか憶えられなかった

首の長い鳥たちが
かるがると山を越える
鳥のようになって
山ほどの夢を託した
どれだけが叶えられたかはわからない
鳥たちのことは
つぎつぎに忘れてしまったから

今はただ
山はそこにあり
神さまは眠りつづける
山もふかく眠り
もう夢をみることもない





自由詩Copyright yo-yo 2008-10-25 06:37:33
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