日比谷線
kauzak

シルバー剥き出しのステンレスカーの丸みを
帯びたそのフォルムは柔らかくて東武線の武
骨な旧型車より洗練されていた

(実は武骨に見えた旧型車は日比谷線の車両
 が登場する直前まで製造されていたことを
 あとから知る)

小学生のころ家族で海水浴に行くときも中学
生のころ友達と映画を見に行くときも東京へ
のアプローチにはいつもこの電車がいた


隅田川を渡る鉄橋を越え高架から一気に地下
に潜り急カーブに喘ぐ電車


どうして日比谷線はこんなにも回り道ばかり
するのだろう秋葉原から銀座にたどり着くま
での時間を僕はいつも持て余していた

だからなのか日比谷線の沿線には東京タワー
の最寄り駅もあったのに物心ついてから僕は
東京タワーに行った事がない


丸みを帯びた電車は僕が親元を離れて日比谷
線が走る路線の沿線を去った時期に新型電車
に置き換えられていき

その時に初めてあの電車のニックネームがマ
ッコウクジラだったことを知った


自由詩 日比谷線 Copyright kauzak 2008-10-24 21:10:44
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
メトロで行こう