ひとり遊び
小川 葉

 
ひとり遊びしてると
きゅうに孤独を感じることがある
ひとり遊び
という言葉を知らなくても
たしかに僕は孤独だった

夜遅くに
父さんが帰ってくる
忙しくて食べられなかった
と言って
母さんがつくってくれた
お弁当を食べながら焼酎を飲んでる

僕ははしゃいでる
父さんもいっしょにはしゃいでくれる
けれどもまたすぐに
母さんがつくってくれたお弁当を食べながら
焼酎を飲んでる
ひとり遊びするみたいに

休日
父さんがはじめて僕を
釣りにつれていってくれたあの休日

僕と父さんは
一本の釣り竿をかわりばんこしながら
ふたりで釣りして
遊ぶことが楽しかった
さかなは一匹も釣れなかったけど

父さんは
忙しくて食べられなかった
お弁当を食べてすぐに居間で眠ってしまった
焼酎はまだ
半分以上も残ってるのに

僕はまたひとり遊びをはじめていた
マドラーを釣り竿がわりに
ちいさなグラスに残る
焼酎をおおきな池ということにして
眠ってしまった父さんの手に持たせたり
僕が持ったりして
かわりばんこしながら
さかなが釣れるまで遊び続けた

こんど休みもらえたら
また一緒にいこうな

父さんの声をまねて
そう言うと
父さんはうんうんと
寝言で何度もうなずいた

グラスの氷がとける
微かな音がしたそのあたりを
さかなが二匹
なかよくならんで泳いでいた
やがてとけてしまう
父さんとふたりで遊んだ
休日の日々のように
 


自由詩 ひとり遊び Copyright 小川 葉 2008-10-24 00:43:41
notebook Home 戻る