火傷
ホロウ・シカエルボク




固く握りしめた
拳をぶつけあうような
ギラギラした発芽だった
街をなぎ倒すような
雨が降り続く深夜
裏口からもぐりこんだ
潰れた小さなブティックのフィッティング・ルームで
言葉はすべて
雨音に喰われたから
俺たちは
躍起になったんだ
爆撃のような騒がしい深夜
おまえは唇を傷つけ
俺はひどく肘を打ちつけた
うっすらと血が滲むほどだったけど
痛みなんか気にもしなかったんだ
すべて鋭利で、すべてが直線的に
あらゆるものが降り注ごうとしていた
それらが引き起こす現象の
俺たちはささやかな一部だった
雷鳴のように
何かが脊髄を貫き
「生まれてきてよかった」とでも言いたげな調子で
おまえはにっこりと微笑んだ
ひとつの線の上のふたつの運命
俺たちは確かに一度生まれ変わったのさ
雨が止むことがなければいいと思った
このまま世界が水没すれば
フィッティング・ルームの箱船の中で俺たちは
アダムの助骨のような言い伝えになれるのに
雨が止むことがなければいいと思った
世界が水没するまで止むことがなければと


枯れた砂漠、焼けつく太陽に
生きる理由まで焦がされながら
あの時の雨の音を思い出す、あの時の
鼓膜を吹き飛ばすような速度のムード、ハニー、もうあんな雨は降ることはないのか
気狂いじみた無数の跳弾の中
世界の外側で痙攣を繰り返した、あの夜の強い雨は
喉が焼けつく、もう少しで
どこかの街に辿り着けるはずさ
錆びたジープの上のカラス
俺の目の奥で燻る思いを見ていた


あれから
何度目の漂流





遠くの道で
激しくタイヤが軋んだ




自由詩 火傷 Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-10-24 00:12:50
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