ふたりのセカイ
うおくきん
やっぱ、君と僕とでは生きているセカイが違うのに気づいたんだ。
ズレがどんどん大きくなっていくのに気づいたんだ。二人のセカイはぼやけていく。
君はちょっと疲れただけの普通の女の娘。僕は生まれながらの終わったキチガイ。ふたりで生きていくのはどー考えたって無理だよね。
でも、好きなんだ好きなんだ好きなんだよう。
好きだったんだよう。
だから、もうダメなんだ。終わりにしよう。
君の愛情と僕の愛情を無駄使いしてるから。
「好きだから一緒に暮らしたい」って言われた時、僕は舞い上がったね。はじめて感情が持てるかもしれない、そう思ったからさ
でも、冷静に考えるとソレは無理なんだ。
僕に恋人を持つ資格なんかないんだッ!
僕に家族を持つ資格なんかないんだッ!
だって、今まで誰も僕を好いてくれた人なんかいなかったし、むしろイヤがられてきたから、愛するってことも、愛されるってことも、どんなことなのかってことがわからないんだ。
だって、父親には殴られ、母親には放置されてきたから、家族ってものがどんなものなのかってことがわからないんだ。
正直、どんどん君を好きになっていく僕が怖いんだ、
正直、どんどん僕を好きになっていく君が怖いんだ。
今はただもうこの夢のような恋から逃げ出したいだけなんだ。
そして、いつか僕もアイツのように、君を殴りそうで殴りそうで殴り殺しそうで!、怖いよう。
うう、ちょっと興奮してきたッ!
お別れのキスはもうすませたよ。
泣かないで泣かないで泣かないでよう。
ごめんねごめんねごめんね。
君のそんな顔は見たくないよ。僕も泣けてきたよう。
ああ、ふたりで一緒に泣くのは初めてだね。
僕は君を何度も何度も泣かせてきたけれど、僕はいつも無表情無反応で屍体もいいとこだったからね。
うう、君のその涙が僕を優しくさせる、君のその涙が僕を残酷にさせる。
僕の優しさで君を恋に縛りつけ、僕の残酷さで君を恋から正気に戻す。
その無限ループから逃げ出したいッ!
ああ、君から溢れだす涙をペロペロペロペロ、うう、女の娘の涙は美味しいなあ。
ソレがさ、大好きな女の子の涙だったらさ、なおさら最高さね!
うう、ちょっと興奮してきたッ!
でも、さよなら・・・
恋人としてみられてないしね。
ソレぐらいわかってるさ。
おしまい。