no'feat'her,noplace
aidanico

彼女は言った
翅があるんだって
臆せず言った
何所へでも飛んでゆけるのだって
でもその翅は堅かったけど薄くって
プラスチックの板のように脆くって
いつかぱきりと
音を立てて割れてしまった
いつかぱきりと
彼女自身の手で
彼女の明日を手折ってしまった
自分の翅は柔らかくて
飛び降りてもしなやかに羽ばたくと思ったのだろう

彼女は言った
生き物の皮なんて卑劣だと
加えて言った
童話にも出せない残酷さだと
でもその毛皮はとても手触りが良くって
首周りに巻くととても暖かくって
いつかふわりと
彼女の手に握られていた
いつかふわりと
頬を掠めるように
過ぎていったそれは
彼女の意志を曲げていった
自分の皮は死んでなお
冷たいだろうと悟ったのだろう

誰が彼女の死を拒めたのだろう
誰が生き物の暖かさを拒めただろう

彼女に未来は無かった
毛皮なしには
何所へ行こうとも、何所へ行こうとも


自由詩 no'feat'her,noplace Copyright aidanico 2008-10-22 23:17:01
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