てぃん とぅん てん とぅん
AB(なかほど)
風
風が吹いてくると
潮のにおいがしないかと期待して
きっとそんなことはないんだろうと
わかってはいるのさ
東京 東京
なんてさ
てぃん とぅん てん とぅん
聞こえてくる
童歌の意味が
たったひとつの意味になる
なんてことはないんだよ
ただ 胸んところが きゅ
って なる意味
てぃん とぅん てん とぅん
風が吹く
その風が
たったひとつの意味になって
間違いなく僕に向かって
そのにおいを連れてくる
そのにおいに連れられて
その風に乗って
低く 高く
この街の上をすべるように
眺めていると
十九の街が手を差し伸べている
東京ってさ
こんなはずじゃなかったよね
って言いながら
膝を抱えながら窓の外を眺めてる僕
風は
風
風が吹いていたよ
いつも懐かしい風が
君の街にも
君の懐かしい風が
君が振り返れば
その風に触れて
いつでもやさしいひとたちの
顔が浮かんできたはずだよ
あれから
もういくつもの冬が過ぎた
風
てぃん とぅん てん とぅん
うまいことが言えないんだ
こんなにも遅れてしまって
ようやくやさしくなれそうな気がするのに
それでも
うまく言えないんだ
今住んでいる町からも
手を伸ばせば
やがて聞こえてくるのか
てぃん とぅん てん とぅん
てぃん とぅん てん