物語の夏—真島昌利に
草野春心
爆音も何処か哀しかった
ごつごつとした手のひらで
けれど子どものように遊ぶ指で
かれのギターは夏をいつくしんでいた
いつかかれが詩に書いていたが
この夏ぼくもハックルベリーに会った
ついでにモービィ・ディックにも
でもいつか気がつくと
舗道に溶けたアイスクリームの中で
何人もの友達が死んでいった
比喩的に
それからもちろん現実に
繰り返すことで
物語を繰り返すことで
ひとは夏を取り戻したいのだ
でもかつて友の生きたその日を
ぼくらが繰り返し生きることはない
せめてかれが歌ったように
かれが砕けそうな声で歌ったように
ぼくはぼくの夏を生き
やがてぼくの死を死のうと思う