物語の夏—真島昌利に
草野春心

  

  爆音も何処か哀しかった
  ごつごつとした手のひらで
  けれど子どものように遊ぶ指で
  かれのギターは夏をいつくしんでいた



  いつかかれが詩に書いていたが
  この夏ぼくもハックルベリーに会った
  ついでにモービィ・ディックにも
  でもいつか気がつくと
  舗道に溶けたアイスクリームの中で
  何人もの友達が死んでいった
  比喩的に
  それからもちろん現実に



  繰り返すことで
  物語を繰り返すことで
  ひとは夏を取り戻したいのだ
  でもかつて友の生きたその日を
  ぼくらが繰り返し生きることはない
  せめてかれが歌ったように
  かれが砕けそうな声で歌ったように
  ぼくはぼくの夏を生き
  やがてぼくの死を死のうと思う



自由詩 物語の夏—真島昌利に Copyright 草野春心 2008-10-21 18:53:35
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