毬藻
鯨 勇魚
心に栄養価不充分ですから、
あたしは水面に苦しんでいる。
アクリル球体中には、
くるむよに隔てた、優しさがあるのですが。
あたしが生きる為の酸素は、
あなた無しでは流水無きこの場、
居て欲しいにかぎるのです。
あなた、一つ確かである言葉を内面に持ち合わせています。
欲しい。あなたの優しさが欲しいのです。
ね、あなたと小さなあたし
一緒になってるのはね
浮かんだ時に内包してくれるの
そのまま、ふたり沈むなら
隠れてしまおうよ
(まあるいね。なでてあげたい。)
少しづつ知る。少しづつ取り込んで。
あたしは夢中であれとつぶやき、
一線を越えてしまうのです。
心から包まれそうです。
恋愛よりも、きっと良いものだから、
(ころん、カラカラ、ころころん。)
沈み込んだ先には暗く、
あなたの悲しみがありました。
知る事で伝えるあたしの為の犠牲。
あなたはあたしの為。
酸素を得ようとするから、
あなただけ苦しんではいけない。
ですから、深層でのふたり、
ひとつに、まあるいのです。
ふたりの声が聞こえて、いる。
お互いを触しながら。
でも、
あなたは怯えてもいる。
海洋と淡水の合流点、澪にて。