冬の燕 ☆
atsuchan69

浅瀬に繁る葦たちを敏く一望に過ぎ、
彼の地エジプトでの安らかな暮らしを恋う
されど、ああ。すでにサファイアの瞳に囚われたこの身
ただ、鉛色の心に惹かれては哀しみを知り、
涙の雫で翼を濡らしてさえ、尚も憂いの人へと寄添う

儚く、貧富の隔たりをともに煩い
まだ見ぬ世界を朧(おぼろ)に見つめ、
やがて旅立つ夜、清いキスを最後に交わした
ランタンの灯もか細くきえる寒空の下、
忘れられた命が暗い路地に横たわる 

愚かな冬の燕、小さな死んだ鳥。








――オスカー・ワイルド作「幸福の王子」より
【atsuchan69/cover version】 ――




自由詩 冬の燕 ☆ Copyright atsuchan69 2008-10-18 21:32:20
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