ザ・ブーンンンンン
砂木

足が欲しいなあ
砂にうもれながら
サンダルはつぶやいた
私のもう片方は 波がさらったのに
どうして私は砂にうもれているのかな
私達を歩かせる足があれば
ひとつになれるのに 一足なのに
どうして
どこにいってしまったの 空さん

ああああ それは無理ってもんさ
足があったって海は渡れないよ
なんだい おれら砂の中だって
いい夢はみれるんだよ
ほら もうすぐすべて忘れられる
子守り歌を歌ってやるよ

いらない 歌なんかいらない
生まれた時から ふたつでひとつだった
この広い波の瀬戸際に 置き去りにされ
失った意味を超えて 共に海を見た
歌なんか歌わないで 歌になんかしないで
かえってこないのに かえってこないのに

消えたわけじゃないよ
海は続いているんだ
どこかの陽気な風や海や岩と
旅をしているのかもしれない

私を置いて行ったのに 旅なんて
どうして

どうしてって ねえ あああああ
砂達はいっせいに歌った

砂にうもれながら 砂を掘り返す
器用な泣き虫の可愛いあなた
旅にでたのは あなたのせい
あなたにまた会う日を夢みて
あなたの もう片方は 海を渡っている

私はここにいるのに 旅ってなんなの

かえるための門出
さあ うもれて歌うがいい
待っていると 変わらず 待ち続けると

いや 私は歌わない
歌わない 帰ってきて
いやあああああああ

ああああ 帰ってきて ってさ

何それ

郵便が届いたんだよ サンダル船長さん
風が言った

砂郵便ていってね あいつら 風に乗って飛ぶんだけど
まあ 気まぐれに伝言を勝手にするんだ
砂浜に置き去りにした もう片方のサンダルかららしいよ

帰ってきてって言ったってさあ サンダル船長さんは涙ぐんだ

うんそうだよね 沈むの時間の問題だよね
浜までは帰れないなあ

風さん サンダル船長さんは言った
必ずまた会おうと伝えてくれ

無理じゃないの

夢で いつか必ず会おうと伝えてくれ

了解 あっ船長さん 岩のかけらさん
沈んじゃう

心配するな どこまでも海の中だ
楽しかったよ またね 風さん

うん 楽しかったよ またね
岩のかけらさん サンダル船長さん
海さん よろしくね またね
さあ 砂郵便をつかまえよう

あああああ





自由詩 ザ・ブーンンンンン Copyright 砂木 2008-10-18 20:52:13
notebook Home 戻る