( 今)に立つ
服部 剛

職場の休憩室で 
目覚めた朝 
ふいに手を見ると 

午前零時過ぎまで残業した 
昨日の仕事をメモした文字が 
手の甲に薄っすらと残っていた 

昨日がどんなに忙しかろうと
昨日がどんなに充実しようと 
手の甲の文字は消えてゆく 

昨日の笑い声もいつかの悔し涙も 
遠ざかる過去に立つ 
ドアの白い入口に吸い込まれゆく 

いっそのこと 
手の甲に薄れた文字の全てを 
石鹸せっけんで洗い流してしまえばいい 


(今日も私は無心で水道ノ滝の下――両手を洗う)


絶えず流れる時の中 
過去でも未来でもない 
上でも下でもない 
(今)という場の中心に 

私は立つ 








自由詩 ( 今)に立つ Copyright 服部 剛 2008-10-15 17:23:45
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