「休日」
広川 孝治

本屋の狭い通路を歩く
鉛色の不安感に背中を押されながら

並ぶタイトルの文字が躍る
囃し立てるように踊っている
羨望の色をみなぎらせた瞳に映るのは
登頂を拒むようにそそり立つ岩盤のような本棚に
隙を見せずにぎっしり並んだ無表情な背表紙たち
見下ろされる自分の哀れと無力に立ち尽くす

突然、肩を叩かれた
見慣れた友人の顔がある
世界にはばたこうとしてる彼の顔は
直視しがたいほど輝いており
うっすらと同情の色が瞳に宿っている

ああ、もう許してくれ
僕の居場所を与えてくれ
気遣いも同情もいらない
ただ、夢に殉じる生き方を、そっと片隅でさせて欲しい

一人で家路につく僕の行方を
遠雷が待ち構え
濁った雲が垂れ込めて
湿った空気が道を阻む

鉛色の不安感が重みを増しながら
僕の胸を満たしてゆく
ゆっくりと、確実に


自由詩 「休日」 Copyright 広川 孝治 2008-10-15 15:43:42
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