ためらい
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ここ数週間の関係は最悪だった
もう連絡してこないでとか言いながら
断りもなく合コンに参加したとか
とにかく何でも喧嘩の理由になった
電話越しだったから余計まずかったんだ
お互い顔が見えないと遠慮がなくなる
最後の方は子どもレベルの貶しあいで
別れを選んだのは自然な流れだった
冷静になったのは電話を切った後だった
それまでの熱が一気に冷めていくのを感じた
取り返しのつかないことをしたと
気付いた時にはいつだって手遅れ
本当はまだ君のことを嫌いになんてなれない
いつから素直になることがこんなに難しくなったんだろう
向こうから電話がかかってきたのは
それから四日後のことだった
とにかく面と向かって話がしたいと思い
近くのファミレスまで呼び出した
この前まであんなに激昂していたのに
会っていきなり「この前はごめんね」
予想外の態度に言葉が見つからず
君の話をだまって聞いていた
そして流されるように頷いた台詞
「別れた方がお互いのためになるよね」
本当はまだ君のことを嫌いになんてなれない
どうしてこんな時にだけ変に素直になってしまうんだろう
タクシーを待つ間のわずかな時間
沈黙が二人の距離を余計に遠ざけた
だけどあと少しだけ勇気があれば
間に合ったものがあったかもしれない
本当はまだ君のことを嫌いになんてなれない
一体どれが素直な気持ちだったんだろう
本当は君だって同じことを思っていたかもしれないのに
いつから素直になることがこんなに難しくなったんだろう
ドアを閉じてタクシーは走り出した
君は夜の街に消えていった
ためらいがちに終わった恋を
降りだした雨が冷たく濡らしていた