校庭に埋めるもの
パラソル

校庭の中をバイクで乗り入れた一人の父親が
息子の墓を作りはじめる

まず、水ぶくれのようになったなきがらを
手などがずり落ちないようにしながら
慎重に袋からとり出す

次に、校庭に穴を堀り始める
土が固いので10時間ほど費やす
その間にもカラスがやって来て
息子の体をついばみはじめる

やっと穴を掘り終わると
息子はもうほどんど骨になっていて
小さなレバーのような心臓だけが
骨にこびり付いていた

耳を近づけても
もう音は聞こえない
頭蓋骨にぽつんと空いた穴に目くばせをして
最後の別れをする

そのあとは、骨になった息子を
なるべく見ないようにしながら
穴にほうり込んで
あまり土をのせずに
地面とそっくりな色のベニヤ板をのせる

何も知らない生徒が
足を踏み外して、落ちるように。

上には、石も何も、のせない。

父親は
最後に、一本のろっ骨を記念に持ち帰る


自由詩 校庭に埋めるもの Copyright パラソル 2008-10-13 12:52:36
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