美しきもの
星月冬灯


 この世で美しきもの

 それは稚児の顔。小さき子らが飴玉を

 口にほうばっている姿。

 娘さん。清潔な落ち着きのある

 美しき女学生。

 若き青年。青春を謳歌して

 日々を生きる。


 栗の木。春の風にたなびく大きな大樹。

 小鳥。大空を羽ばたく小さくも大きな鳥。

 秋の夕陽。黄金の稲穂に映える雄大な夕陽。


 美しきものは

 だんだん  だんだん

 堕ちてゆく。


 堕落してゆくそれらは

 もう元には戻らない。

 みんな  みんな

 堕ちてゆくしかない。

 這い上がる術が見つかるまで。


自由詩 美しきもの Copyright 星月冬灯 2008-10-12 15:36:41
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