帰郷
伊月りさ
無邪気ではなかった
大人、そう
そうすることでしか立ち上がれない
きみが貶した街に立つ
軽やかな構成を切り離したい
上顎が
切り離したかった
きみを溶かす
舌が
強力に吸いついて
溶ける
至福で
溶けた絶叫を飲み干している
きみの地続きに
点在する足跡 大口を開けて
いくつも
家庭という器官をのぞかせる
つややかな影は
待ち構えて
衝突して、跳ね返す、響き合う、その喧騒が
くだらない、と
見くだすためだけに
海を越えてきたという
稀に勝手に涙する
この回路を組み替える
征服の哀しさに気がつかないまま
きみは海岸沿いで
大人を解除する
大人の液体は不味い、と
狂う、きみを
「あいしている」
わたしは
貶される言葉
翻訳の狡さに気がつかないまま
ひとり、またここに帰る
大人になっていた
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落下光