ヘルメスの月
朱雀

音もなく

無窮の果ては闇に落ち

虚空の下で

貪婪どんらんな渇きは癒えず


玲瓏たる

銀の雫に月は盈ち

秤の上で

静謐なほむらを煽る


たまが振れ

産霊むすひほどけ 月を欠き

器を返し

潺湲せんかんと滴る水銀


あまは凪ぎ

底方そこいに宿るあらたまは

昇華を成して

悠然と朱に染め上がる



――瓏銀の水面みなもに惑うエトランゼ

    バーミリオンの月はかくれて――




自由詩 ヘルメスの月 Copyright 朱雀 2008-10-11 20:37:20
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月下の幻視者